北条政子と源頼朝


流人時代の源頼朝と北条政子が逢瀬を重ねたと伝えられる伊豆権現(伊豆山神社 いずさんじんじゃ:静岡県熱海市伊豆山上野地708-1)。伊豆山神社公式ウェブサイト 

伊豆権現の境内には梛の木があり、源頼朝と北条政子は、その葉を変わらぬ愛の証に持っていたといわれます。

伊豆権現について南方熊楠が書いた文章から引用(『南方熊楠全集 第6巻』平凡社、236 – 237頁 「花さく庭木の話」より)。

伊豆権現、実は百済の王孫辰爾という学者を祀った社とか。その高祖父辰孫王は、初めて韓国より書籍を持ち来たり、本邦に文学を起こした人だ。『貞永式目』の起請にも、違反者は別して伊豆・箱根両権現の神罰を蒙るとあって、ことに武家にあがめられた。社の境内に高さ十丈のナギがあり、その葉を持たば災いを免れ、鏡に敷けば夫婦中睦まじといったが、天保三年大風で倒れてしまった。ナギの葉は筋強く、いくら引いても切れぬから力柴と呼ぶ。したがって夫婦の縁のきれぬよう、離れていても相忘れぬよう、と鏡の底に蔵めて守りとした。古い投げ節に、「今度ござらばもてきてたもれ、いづのお山のなぎのはを」。元禄十六年板『松の葉』には、「今度ござらばもてきてたもれ、ぎふのお山の檜(ひのき)の枝に浮き世がかりの思ひばを」。

 

♪ 今度御座らば持て来てたもれ 伊豆のお山の梛の葉を お山のな伊豆の 伊豆のお山の梛の葉を ♪

この歌は近世中期に流行ったようですが、この歌は、女性から男性に「伊豆山の梛の葉を持って来てくださいね」とお願いする、恋の歌です。

この歌にはもと歌があります。熊野比丘尼が歌った「びくにうた」がもと歌。
こちらは信仰の歌です。