今度ござらば 熊野比丘尼


古浄瑠璃『霊山国阿上人(りょうぜんこくあしょうにん)』より、熊野比丘尼が歌う「びくにうた」。

今度御座らば持て来てたもれ みつのお山のなぎのはを

(訳)今度熊野にお参りする機会がございましたら持って来てください。熊野三山の梛の葉を。

「比丘尼歌」は熊野比丘尼がレパートリーとしていた歌謡。梛の葉を配り、喜捨を受ける際に歌った歌だと思われます。

この歌は近世とても流行したようで、『淋座敷之慰 (さびしざしきのなぐさめ)』では 、

今度御座らば持て来てたもれ 伊豆のお山の梛の葉を お山のな伊豆の 伊豆のお山の梛の葉を

とあり、歌詞を変えられて歌われています。

こちらの歌は女性から男性に「梛の葉を持って来てくださいね」とお願いする歌です。

梛の葉の丈夫さにあやかって、「男女の縁が切れないように」と梛の葉を女性が鏡の裏に入れてお守りとする習俗がありました。ですので、こちらは恋愛の歌です。

元記事は「比丘尼歌:熊野の歌」。